こんにちは!船橋市・馬込沢の藤田ピアノ音楽教室、代表の藤田晃太朗です。今回は、モーツァルト後期の作品、ピアノソナタ第17番 B-Dur KV570の演奏法と表現のポイントについて解説します。この楽曲の、シンプルながらも奥深い魅力を引き出すお手伝いが出来れば幸いです。
まずは、演奏動画をご覧ください。全体の雰囲気や響きを感じていただけると、この後の解説がより分かりやすくなると思います。
演奏解釈の土台: KV570の全体像をつかむ
このソナタを弾きこなす上で、まず楽曲全体の構造(形式)を理解することが非常に重要です。形式を知ることで演奏に深みと説得力が増し、より豊かな表現につながります。
- 第1楽章: ソナタ形式(提示部・展開部・再現部)
- 第2楽章: ロンド形式(主要主題と、間に挟まれるエピソード主題が繰り返される)
- 第3楽章: 変則的なロンド形式
これらの形式を意識しながら、各楽章のポイントを見ていきましょう。
【第1楽章:Allegro】
- モーツァルトらしい軽やかさを大切に: 全体的に、重くなりすぎないように心がけましょう。
- 旋律線を歌わせる:特に23小節目から始まる箇所は歌のように旋律線を大切にしましょう。全体的に旋律ラインを大切に弾きましょう。
- 適切なテンポ設定: 速すぎると軽やかさが失われ、旋律の美しさも伝わりにくくなります。心地よいアレグロ(快速に)を保ち、音楽が窮屈にならないようにしましょう。
- 効果的なペダリング:例えば、表情豊かに歌いたい箇所(35-37小節の左手の旋律線や、63-64小節など)では、響きを豊かにするために1拍ごとのペダルを用いることも有効です。ただし、モーツァルトの透明感を損なわないよう、濁りには注意が必要です。
- 解釈のヒント(装飾音)
- 57小節: 自筆譜ではラ(A)ですが、旋律の流れを考慮しシ♭(B♭)で演奏する解釈も広く受け入れられています。
- 187小節: 同様に、自筆譜のレ(D)に対し、ミ♭(E♭)を用いることで、より自然な旋律の繋がりを感じさせる解釈があります。
- これらはあくまで演奏解釈の一例です。どちらの音を選ぶかで響きやニュアンスが変わりますので、ご自身の音楽的判断で試してみてください。私自身は、これらの変更が旋律線をより際立たせ、魅力を増す場合があると感じています。
【第2楽章:Adagio】
- 豊かな響きをイメージ: 合唱のような、温かく深みのある響きを目指しましょう。
- 脱力と手首の柔軟性で美しい響きを: 美しいレガートや豊かな響きを生み出すには、肩や腕の力を抜き、手首を柔らかく使うことが不可欠です。打鍵の瞬間に重みを乗せ、美しい響きを引き出しましょう。
- 叙情性と構成感のバランス: この楽章はソナタ全体で最も長く、美しい旋律が次々と現れます。感情豊かに歌うことはもちろん大切ですが、一方で音楽の流れが停滞し冗長にならないよう、大きなフレーズの流れや楽曲全体の構成感を意識し、推進力を保つことも重要な意識したいポイントです。
【第3楽章:Allegretto】
- 形式の面白さを活かす: 主題(A)と複数のエピソード(B, Cなど)が次々と現れる、変則的なロンド形式です。特にクライマックスではABCと立て続けに登場し、劇的な効果を生んでいます。この構成を理解し、各部分を理解し表現することで、演奏が生き生きとします。
- オペラのような活気と遊び心: モーツァルトが偉大なオペラ作曲家であったことを思い出させるような、軽快で遊び心に満ちた楽章です。登場人物が掛け合いをするようなイメージを持つと、表現が豊かになります。
- アーティキュレーションの重要性: 楽譜に書かれたスラーやスタッカートなどのアーティキュレーションは、この楽章の性格を決定づける重要な要素です。一つ一つ丁寧に見直し、弾き分けましょう。旋律線がより生き生きとします。
- 快活さを保ちつつ、急がないテンポで: “Allegretto”(やや快速に)の指示通り、快活さを保ちつつも、急ぎすぎてはいけません。速すぎると、せっかくの軽妙な旋律やアーティキュレーションが不明瞭になってしまいます。心地よいリズム感を大切にしましょう。
- 78小節目の左手の跳躍: 特徴的な2オクターブのバス跳躍は、この楽章の推進力の一部です。慌てずに、少しだけ間(ま)を取るような気持ちで(溜めて)弾くと、音楽的な効果が高まります。
まとめ:自分だけのモーツァルトを奏でるために
モーツァルトのピアノソナタ B-Dur KV570は、技術的な難易度は極端に高くないものの、音楽的な深さと表現の幅を求められる、学びの多い作品です。
今回ご紹介したポイント、
- 形式の理解
- 旋律線の歌わせ方
- 適切なテンポとアーティキュレーション
- 響きのコントロール
- 楽章ごとの性格付け
などを意識して練習に取り組むことで、皆さまの演奏はさらに魅力的になると思います。ぜひ、ご自身の解釈を大切に、皆さまだけのモーツァルトを奏でてください。
参考文献 W.A.モーツァルト 『ピアノ・ソナタ集2 新訂版』 ウィーン原典版 ウルリヒ・ライジンガー校訂 ハインツ・ショルツ運指法 ロバート・D. レヴィン演奏への解釈 寺本まりこ訳 東京:音楽之友社, 2005。
Mozart, Wolfgang Amadeus. Klaviersonatem Band Ⅱ.Edited by Ernst Herttrich, Wolf-Dieter Seiffert. Fingering by Hans-Martin Theopold, Markus Bellheim. München: Henle,2015.
藤田晃太朗
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